安藤の丸善読書録

丸善で買った本の感想を書きます。

「生のみ生のみのままで<上>」綿矢りさ 感想

お疲れ様です。暑いですね。今日ハッとしたのですが、すでに蝉が鳴き始めていました。

虫嫌いな人間からすると夏は虫テロが多発する最悪な季節ですが、今回はそんな虫のグロさとは全く関係のない綿矢りささんの「生のみ生のみのままで<上>」(集英社)を読んだので感想を書きます。

実はまだ4分の3ほど読んだどころなのでまた読了したら加筆したいと思います。

この作品、前回の「つみびと」と違って今のところ構成がとてもシンプルです。一人称語り、時系列も冒頭1ページ以外は過去から現在へ素直に流れています。

私自身綿矢りささんの他作は2作品しか読んだことがありません(「勝手に震えてろ」「生姜の味は熱い」)が、他作も素直な構成でした。

そういう意味では物語の起伏や描写で魅せる方なのかなと思います。

そして問題の冒頭1ページなのですが、おそらく物語が全て語り終えられた現在に書かれているのですが、

「むしろ一体いつ忘れられる?今現在こそが思い出のよう。私はまだ君と過ごした短すぎるひとときに、いつまでも瓶詰めにされたままだ。」p.3

...と、意味深です。ということは、あの2人は別れたのでしょうか?とても興味をそそられる導入です。

さて、中身ですが、主な登場人物は主人公の逢衣、その恋人・颯、颯の幼馴染の琢磨、その恋人・彩夏。全員同い年の25歳。お盆休み、旅行先の秋田のホテルで偶然にも古い幼馴染の颯と琢磨が遭遇するところから物語が始まります。2組ともカップルで旅行に来ているのですが、成り行きからダブルデートの要領で1つの部屋に集まり、一緒に酒を飲んだり、海へ行ったりくっそリア充します

逢衣はホテルのロビーで彩夏と出会った時から、ただならぬ地雷臭を感じます

というのも彩夏は洗練された立ち姿でサングラスをかけ、琢磨と颯、逢衣がにこやかに挨拶を交わす中、終始無言で逢衣を凝視しているのです

ネタバレですが彩夏はこの時、まさに逢衣に一目惚れしていました

そんなことを知るはずもない逢衣は彩夏のことをとんでもなく感じの悪い女だと感じます